2020/02/26
近年、人の医療現場において頻繁に耳にするようになった「薬剤耐性菌」という言葉を御存知でしょうか?
薬剤耐性とは薬が効かないという意味であり、薬剤耐性菌とは薬(抗生物質)が効かない細菌のことです。
はじめて使う抗生物質はとてもよく効きますが、薬を使い過ぎたり、間違った使い方をしていると、薬が徐々に効かなくなっていきます。
これが薬剤耐性菌の発生です。そこで新しい抗生物質に変更するとそれはよく効きますが、また効かなくなる。
そしてまた新しい抗生物質に変える。
これを繰り返しているうちに、多くの抗生物質が効かなくなってしまった薬剤耐性菌を多剤耐性菌といいます。
この多剤耐性菌に感染すると、治療が容易ではありません。
例え単純な風邪であっても完治させるのがとても難しくなり、難治性の肺炎に進行するなど重症化することがあるのです。
では薬剤耐性菌の発生を起こさせないためにはどうすればよいのかというと、
- 処方された薬を自分の判断で途中でやめず、しっかりと最後まで飲みきること(飼い主)
- 抗生物質の乱用を行わないようにすること(獣医師)
- 一般的に効果のある薬を使っても効果が認められない場合は、手当たりしだい抗生剤を使うのではなく、しっかりと効果のある抗生物質を調べてから(薬剤感受性試験を行ってから)、薬を選択するようにすること(獣医師)
などがあげられます。
当院では、3の薬剤感受性試験を積極的にすすめており、通常、検体を検査センターに送って調べてもらうことの多いこの検査を院内で行えるように、試薬・機材をそろえております。
そうすることによって、検査結果が出るまでの時間を半分にすることができますので、早急に治療を始めることができますし、それは当然より早く治るということを意味します。
「今」だけではなく「将来」を見据えて、少しでも薬剤耐性菌を減らすことが出来れば、細菌感染症で苦しむ動物を減らすことができます。
そういう訳で、当院の獣医師から「細菌感染を起こしており、詳しく検査した方がいいですね。」という話があった場合には、検査の御協力をお願いいたします。